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山谷・アート・プロジェクト

フォト・コンテスト2025
​審査員の講評

​審査員(50音順)

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​アオキ祐キ

講評

今回も面白いです。皆さんの日常とその物語を想像しています。毎年開催しているフォトコンテスト、個人個人の切り取りたい景色やその手法が、どんどん確立されてきている気がします。安心して衝動を創造的にカタチにできる環境、皆さんがその中で生活できていることはとても良いなあ。これからもどんどん欲張りになってください。

アオキ裕キ
<新人 H ソケリッサ!> ダンスグループ 。
振付家アオキ裕キが「生きることに日々向き合う身体」を求め

路上生活経験を持つ参加者を集めた活動。
2005 年よりメンバーを募り、第一回公演「新人H ソケリッサ!」を2007 年に行う。

現在2021-2022「路上の身体祭典 H!」新人Hソケリッサ!横浜/東京路上ダンスツアー開催中。コニカミノルタソーシャルデザインアワード2016、グランプリ受賞。活動を追ったドキュメンタリー映画「ダンシング・ホームレス」2020年より全国上映開始。

​◆ソケリッサ!◆

https://sokerissa.net/

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 赤坂真理

講評

 講評をすることになって、正直に言うと、困ったなあというのが本音だった。山谷の典型的な風景というのはなくなったのだと感じる。日雇いのリアリティが、写真に写るまでにありありとあった時代はとうに過ぎているのだろう。それは、個人のことであり、日本の社会変動のことだった。個人が社会変動と直接関わる実感を持てるような、東京タワーを建設した時代のようなことは、今はもうない。そういう強い絵はもう撮れない。人もそんなに活気があるわけではない。労働というよりも、病気や生活保護のリアリティかもしれない。
 あるいは、写真が写真だけで雄弁に語る状況というのは、ある種の極端の中にしかないのかと考えたりする。たとえば戦争や紛争地。たとえば難民。たとえば災害。たとえば病気。
 病気や厄災にしても、写真の観点で見た場合、雄弁な厄災と沈黙の厄災がある。水俣病の写真は人の心を打った。それは、言葉を選ばずに言えば、彼らのかたちが見るからに「かわいそう」だったからだ。一方で、同じように国策企業による厄災である原発事故や放射線の影響は、どんなにしても写真に写らない。人の心を打つことはおろか、伝わりさえしない。この不平等。山谷の今の「伝わらなさ」は、それと似ている。
 的はずれかもしれないが、今年講評を担当して、思ったのはそのことだった。
 もちろん、山谷に住むの人も普通の写真を撮ってよい。センスのよい写真を撮ってよい。もちろん、うまく撮れる。いい写真は撮れるし、テクニックに長けたものも、心を打つものも、ハッとするものもある。ただ、そういうものの中にも「山谷のエッセンス」を写し込むことはできるのか?ということを考えた。
 表現をするなら、自分のどんな属性も活用した方がいい。そのほうが強い表現になる。その点で「山谷」は未だ活用しがいのある属性だ。が、そう考えて撮っている人がいるのか、そこがわからなかった。山谷も、大きく変わりつつある。大阪の西成でも人寄せが取り壊されるなどの大きな変化がある。これは、労働者において、生身の人と人との交流や情報交換がなくなって全ての人がデータだけで判断されるようになることなのだが、こういうことこそいちばん写真に写らない。それに対して写真に何ができるのかを考える。
 もしかしたら写真だけではむずかしい類の社会変動に、私たち全員が、直面している。
 このように写真には写らない類のリアリティに対して、写真に何ができるのかと考えた。写真以外の表現に、何ができるのだろうかと、またそれらが組む可能性について、考えた。
  もしかしたら写真だけではむずかしい。はなはだ写真映えしない社会変動に、日本人はみな直面している。

赤坂真理
東京生まれ。作家。雑誌『SALE2(セールセカンド)』編集人を経て1995年「起爆者」でデビュー。小説作品に、寺島しのぶと大森南朋主演で映画化された『ヴァイブレータ』、『ミューズ』(野間文芸新人賞)、天皇の戦争責任をアメリカで問われる少女を通して戦後を描いた『東京プリズン』(毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部賞)。批評と物語の中間的作品に『愛と暴力の戦後とその後』、『愛と性と存在のはなし』、アディクションを依存症でなく「執着」「固着」ととらえ人類の苦しみと見た『安全に狂う方法 アディクションから掴みとったこと』(医学書院)など。文学の身体的表現にも情熱を持っている。

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朝日教之

講評

ベスト・ワンは
011KURAKIさんの「僕が住む街にお神輿がきた!」
を選ばせてもらいます。
狭い路地に、大勢の男たちが担ぐ神輿が入っていくところを
上手にとらえました。後ろ姿ですが、男たちの熱量を感じます。
脚立を使っているのか高い位置から撮影しているので
路地と家並みがうまく表現されています。祭りがやってきた
という撮影者の喜びが伝わってくる作品です。

朝日教之

フォトグラファー 

1982年朝日新聞社入社。大阪本社写真部、阪神支局を経て、87年から東京本社写真部。神戸大学に同行しチベット奥地のルポや89年の天安門事件の取材などを経験。神戸の児童殺傷事件をきっかけに中学生の心の動きをルポする連載
「素顔の中学生 保健室から」を企画し98年、日本新聞協会賞を受賞。
アエラ・フォトディレクターを経て、現在全日写連関東本部委員。

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岩永直子

講評

012 KURAKiさん。
なんともドラマチックな写真で、手を合わせる仲間、お坊さん、色々な要素が詰め込まれていて、想像力を刺激されます。納骨というデリケートなテーマだからか、仲間がたくさん集まったからか、お墓の陰からそっと見守るような視線も、優しさや人としての配慮を感じます(記者だったら前に出て撮ってしまいそうですが、それはある意味、礼儀を欠いているかもしれないですよね)。撮影した人の優しさ、目の前で起きている出来事を広く捉える視線など、撮影者の人柄も写っていて、心に残る作品です。


岩永直子
東京大学文学部卒業後、1998年4月読売新聞社入社。社会部、医療部記者を経て2015年にyomiDr.(ヨミドクター)編集長。2017年5月、BuzzFeed Japan入社、BuzzFeed JapanMedicalを創設し、医療記事を執筆。2023年7月よりフリーランス記者として、「医療記者、岩永直子のニュースレター」など複数の媒体で医療記事を配信している。2022年8月より本業のかたわら、都内のイタリアンレストランで接客のアルバイト中。23年9月、ASK認定依存症予防教育アドバイザー(10期)に登録。2024年1月、国内初の依存症専門のオンラインメディアAddiction Reportを創設し、編集長に就任した。

​◆アディクション・リポート◆

https://addiction.report/

​撮影:Masaru Goto

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上田假奈代 

講評

004 tokioさん  
写真のなかに優しさがあふれています。この写真を撮ったtokioさんも誰かをふわっと抱きしめるようにシャッターをきったのでしょう。ふわっと背中をだきしめてもらっているような気持ちが、わたしもしました。

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ななめにきりとられた窓、ななめに吹いていく風のよう。その風の向こうには満開のさくら。懸命に咲いている桜をまだ散らせないでゆきすぎた風。その一瞬をとらえたこころは、あれれ?と、すっとぼけていて、おかしい。人生はそんな風なの。

​上田假奈代(うえだ・かなよ)

詩人・詩業家
1969年・吉野生まれ。3歳より詩作、17歳から朗読をはじめる。2001年「ことばを人生の味方に、詩業家宣言」。2003年、大阪・新世界で喫茶店のふりをしたアートNPO「ココルーム」を立ち上げ、釜ヶ崎に移転し、2012年「釜ヶ崎芸術大学」開講。2016年ゲストハウスのふりもはじめ、釜ヶ崎のおじさんたちとの井戸掘りなど、あの手この手で地域との協働をはかる。
大阪公立大学都市科学・防災研究センター研究員、NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)代表理事。堺アーツカウンシル プログラム・ディレクター。

◆ココルーム◆

https://cocoroom.org/

撮影:のりやまもと

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緒方英俊

講評

奈良も朝晩、冷え込むようになってきました。
山谷の“おじさん”たちはどうしているだろうかと、時々、考えます。
春を喜び、厳しい暑さを乗り越え、短い秋でほっと息をつき、そして冬に臨む。
ことしの「写真たち」からも、撮影者一人一人の姿が浮かんでくるように感じました。
ふだんは「自分の生活」を意識することは、ほとんどありません。
でも、“おじさん”たちの作品を見ているうちに、「あれ、自分ってどんな暮らしを送っているんだっけ」と少し振り返りました。
写真から、「生きている」ことが伝わってきたからではないかと思います。
1人も欠けることなく、どんどん新しい仲間も加わってほしい。
写真部のメンバーにこんなにも愛着がわいている、そんな自分にちょっと驚いています。

緒方英俊 

NHK奈良放送局コンテンツセンター長

1993年 NHK入局。科学文化部、NHKジャーナル・Nらじの解説デスクなどを経て現職。好きな犬はウチの元保護犬「ももこ」。好きな古墳は「箸墓古墳」。好きなパンダは「結浜」です。

 ​◆NHK奈良放送局◆
https://www.nhk.or.jp/nara/

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風戸 美伶

講評
KURAKIさん撮影の010番。

本屋でなんの気なしにぱらりと開いた雑誌の一枚に、ふと心をつかまれるスナップに出会うことがあります。まさにそんな、ほのかな高揚感のある作品です。

眼に入ってくるのは、山友会前で並んで腰かけるふたり。まず、こちらをちらりと見やる「おじさん」。指先にはたばこ。火の先のわずかな赤みがゆるりと注意を引き、おとなりさんへと視線を誘います。そのもうひとりの「おじさん」が笑いかける方向は、たてものの直線が集まっていく方向と重なり、自然とわたしたちもそちらへと導かれます。どこか心地よい流れ。仁王像の阿形と吽形のような、はじまりとおわりの呼吸が感じられます。

淡いグレートーンの世界の中で、たばこの火や消火器の赤色は、山谷という街に温度を灯すかのよう。そして、歯抜けになった段差プレート。どれほど人が通ってきたのでしょうか。この場所が長い間、誰かに信頼され、訪れ、腰掛けられてきたことが伝わります。

「袋いりません」と、うすだるい声で言いながらも、そのまま本を抱えてお店をあとに――気づけばわたしたちもその、かろやかな足どりの先にいるようです。

 

風戸美伶

国立西洋美術館・学芸課特定研究員。現在、研究員として作品管理や広報を担当している。ミックスルーツとして育った経験を背景に、こぼれおちそうな声や気配に耳を澄ませながら、日々、表現を模索中。登山と音楽、詩をこよなく愛する。

​◆国立西洋美術館◆

https://www.nmwa.go.jp/jp/

​(c) Go Kakizaki / trorf

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片岡英子

講評

013番「KOJIさんと鳩」に心惹かれました。のんびり屋のハトがKOJIさんを新たな撮影の旅へと誘っているかのようなストーリーを感じました。この旅路でどんな素敵なシーンがカメラに収められるのでしょう。穏やかな始まりから広がる未来への期待が膨らみます。

TOKIOさん、KURAKIさんのテクニックに裏打ちされた完成度の高さはもちろんのこと、MASAHARUさんの効果的なアクセントカラーの使い方、HIROYOSHIさんの心なごむ作風、MARUCHANさんの自由な発想など、すべての作品に唯一無二の個性が光り、1点だけを選ぶのはとても難しかったです。そして、何度も拝見するうちに、「写真」の楽しさを改めて思い出すことができました。皆さんのオリジナリティあふれる作品との出会いに感謝します。このアート・プロジェクトを、今後もぜひ継続していってくださいね。

片岡英子

フォトエディター。2004年『Newsweek日本版』のフォトディレクターとして、写真で世界を伝える連載「Picture Power」を新設し、現在通算960回を越え、連載開始から20周年を迎えた。World Press Photo Contestのアジア地域審査員長と最終審査員(2012、2014、2023)、Sony World Photography Awardsの最終審査員(2022)、W. Eugene Smith Grant審査員(2024)、写真集『A Day in the World』(米、スウェーデン、スペインなど6カ国、2012)の共同編集などに携わり、FotoFest(米)、New York Portfolio Review(米)、Visa pour l'Image(仏)、Hamburg Portfolio Review(独)Kyotographie(日)など、国内外のポートフォリオ・レビューからレビュワーとして継続的に招聘されている。東京工芸大学芸術学部非常勤講師。Miiraii Creativeファウンダー/ディレクター。

​◆ニューズウィーク日本版◆

​https://www.newsweekjapan.jp/

©Tomohisa Tobitsuka

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​木村文

講評

30枚の写真を1枚ずつ時間をかけて拝見しました。そして、対話をしてみました。私がお目にかかったこともない10人の方々と、写真を通してお話をできたように思いました。不思議ですね、じっと見ていると、カメラ(スマホ)を構える皆さんのお顔が見えてくる気がしました。
写真には、その人の今の気持ち、が映ります。楽しい、悲しい、悔しい、つまらない、さみしい、うれしい。人は、そういう気持ちに合わせて撮るものを選んでいるのです。皆さんの写真からは、その時のいろいろな気持ちが伝わってきました。写真は、とってもおしゃべりなんです。全部「正解」ではないかもしれないけれど、「こんな気持ちで撮ったのだろうな」とわかりました。
写真のおもしろさは、こんな風に対話ができるかどうか、だと私は思います。だから、自分の作品をみんなに見せて、皆さんもいろいろな人の写真をいっぱい見て、写真と話をしてみてください。
写真の世界は自由です。見えるものしか撮れないと思っている人もいますが、そうでしょうか? 実は、日常のまなざしでは見過ごしているものを表現することができます。今回の作品にも、多くの人が見過ごしてしまうような一瞬を切り取った写真、視線を変えた不思議な写真、「え、これどうやって撮ったの?」という写真、その時にしか出会えない瞬間を撮った写真がたくさんありました。世界には、見えていないことや忘れてしまうことがたくさんあるなあ、と思わせてくれました。
皆さんはもう、写真家です。写真を見たら、それを撮影した人の姿を想像できる人たちです。奥深い写真の世界をどうぞ楽しんで、「おしゃべりな写真」をたくさん撮ってください。私も、皆さんとのおしゃべりはとても楽しかったです。ありがとうございました。

木村 文 Aya Kimura
記者、編集者
1966年、群馬県生まれ。国際基督教大学卒、米インディアナ大学ジャーナリズム学科修士課程修了。1992年、朝日新聞社入社。山形・山口支局、福岡社会部、沖縄タイムス出向を経て、2000年からアジア総局員(バンコク特派員)、マニラ支局長。2008年退社、翌年カンボジアへ移住。現地で月刊情報誌「プノン」を計92冊発行。JICAカンボジア事務所の広報アドバイザーなどを務める。
2021年に日本へ拠点を移し、個人事務所「プログレス・コミュニケーションズ」を設立。記者、編集者、コミュニケーション・コーディネーターとして活動している。2021年から小野田コミュニケーションデザイン事務所と出版社「めこん」にて企画担当、2023年からは朝日新聞とゲイツ財団のコラボで運営されるニュースサイト「with Planet」の副編集長。2024年8月から国連人口基金メディアサポート。また、2022年よりFMラジオJ WAVEの「Jam the Planet」にニュースエキスパートとして出演中。

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​訪問看護ステーションコスモス

​講評

009番Daimonさんの写真。一位、看護師と患者様との仲の良さ、担当の看護師さんとの自撮り写真、楽しげな雰囲気に、信頼関係も写っているような一枚

012Kurakiさんの写真も同点一位。

024番Hiroyoshiさんの写真。訪問している土地が切り取られると、こんなにも情熱的な風景に映るんだなと感動しました。

008番Daimonさんの写真。現場でよく見る、あるあるの光景だな、このまま氷を取り除こうと思うと冷蔵庫の蓋も壊れちゃうんだなと思い出し笑いしました。

訪問看護ステーション・コスモス

「山谷に関わりながら看護を!」との想いから、看護の仲間が集まり「山谷地域を含めた訪問看護ステーションの開設」をする。以後地域に根付いた活動を続けている。1999年夏設立。

◆訪問看護ステーションコスモス◆

https://www.s-cosmos.org/

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​坂川裕野

講評

ドヤがなくなりマンションが建ち、昭和の風情が失われていく印象が強い今日の山谷。それでも皆さんの写真を見ていると、まだ町が持っていた空気と歴史が途切れることなく息づいているのだと感じられます。私が今回強く惹かれたのは、019、紫色の花の写真。撮っているMASAHARUさんと、花との間で会話が始まりそうな、絶妙が距離と向き合い方だと思ったのです。「やっほー、ようやく咲いたんだね」「うん、ひっそりとやっているよ。そっちはどう?」「こっちもぼちぼちだよ。でも東京は暑くてやってらんないねえ」「まったくだ。いつからこんなになっちまったんだろう。長くは咲いていられないだろうから、そのカメラで撮ってくれよ」「パシャリ」…。MASAHARUさん、この花朝顔でしょうか?

坂川裕野

NHKで福祉番組のディレクター。
モットーは「感じる番組」「媚びない番組」「100年後も響く番組」。
コロナ禍に山友会の活動も覗かせていただいたご縁から審査員になりました。
楽しみながら、心して、見させていただきます(^^)

​◆ハートネットTV◆​​

https://www.nhk.jp/p/heart-net/ts/J89PNQQ4QW/

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​品川亮

講評

その人がその時にそういうふうに見ることでしか存在しなかった、その人がそこにいてその瞬間にシャッターを切らなければ存在しなかった現実、と感じられる写真が私は好きなのですが、ここにあるのはすべてそういう作品だと思いました。そういう意味で、撮ったみなさんの人生のごくごく小さな断片が伝わってきますし、山谷という場所の持つ文脈を知らなくても、ここにある写真を見ているだけでわれわれの中ではさまざまな物語が勝手に立ち上がり、いろんな世界の手ざわりがたしかなものとして迫ってくるようです。そうしたものがぐるりと回って山谷という場所に収束していったり、どこまでも外へ外へと伸びていったりするのが楽しく、しかも私自身にも刺激されるものがあり、みなさんの作品をもっとたくさん見たいと思いました。

品川亮
東京生まれ、リマ(ペルー)育ち。文筆、翻訳、書籍編集、映像制作業。著書は『366日 映画の名言』(三才ブックス)、『〈帰国子女〉という日本人』(彩流社)など。訳書は『アントピア』(ウォルター・モズリイ著/共和国)、『アウシュヴィッツを描いた少年』(トーマス・ジーヴ著/ハーパーコリンズ・ジャパン)など。映像作品は『ほそぼそ芸術 ささやかな天才、神山恭昭』、『SECTION 1-2-3』(アサヒ・アート・フェスティバル2007)など。

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​高橋啓一

講評

わたしは何十年も、海をプカプカ漂う椰子の実のように、社会の大きな流れに、ただ流されて存在しているだけでした。ですが今年はある仕事によって変化が起きました。ある人が、今までの人生で会ったこともない人と、わずか数分だけ対面する。そして、どちらからともなく自分の心の底にあるものを、何の損得もなく、初対面の人に全部さらけ出す。そして去っていく。そんな光景を何度も目にし・声を聴くことで、自分の中で少しだけ立ち止まって、周りの風景や関わった人たちのことに想いを馳せる、なんだか懐かしい気持ちを持つことができました。

今回、写真を見させていただいて、それと近い気持ちが湧いてきました。作品には、この人は、どんな気持ちでこの写真を撮ったんだろうか?聞いてみたいな。と思うものばかり。たった1枚の写真から、人と人の対話が生まれるのかもしれないな。そう感じました。

高橋啓一

株式会社博報堂PR局PRディレクター

旅とお酒が好きな気楽なサラリーマンを30年以上やっています。会社勤めの傍らでは、あれこれお声かけていただいています。  

青森県八戸市観光戦略審議委員
内閣府男女共同参画局 女性のチャレンジ賞 選考委員(2013年~2018年)
一般社団法人 女性労働協会 女性の健康 検討委員(2018年~継続中)
国連グローバルコンパクトジャパンSDGsタスクフォースメンバー(2023年~継続中)
日本プロサーフィン連盟 監事
NPO葉山ライフセービングクラブ ライフセーバー

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​橋本久美子

講評
「山谷・アート・プロジェクト」2025年、昭和100年「おじさん」たちの写真は境界線を越えました。
HIROYOSHIさんの作品022
人と空気と外と距離との境界線をHIROYOSHIさんの指が曖昧にしました。
混じりあう事のない人と指が重なり、混じりあいました。
アートが境界線を越えました。
作品022は私との境界線も超えてきました。

橋本久美子

ソーシャルワーカー 
母子生活支援施設で働きながら、女性たちと関わるソーシャルワーカーをしています。
家庭でも家族でなくてもいい、故郷はだれにでも在ったらいいのにと願うから私は
母という名の故郷のために働いています。

​撮影:Masaru Goto

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吐師秀典

講評

一番気に入った写真はMISAOさんの003番。感想「撮影者の今の暮らしの中で必要だったり好きだったりするものが雑然とながらみんな写っているのではと思わせられる写真。写っているものを見ていると、世界は広いようで狭くて、部屋は狭いようで広い。そんなことまで考えてしまう写真です」

吐師秀典 

NPO法人友愛会理事長

高校生の時から山谷に来てかれこれ30年になる。訪問看護師でもある。

◆NPO法人(特定非営利活動法人)友愛会◆ 

https://you-i-kai.net/

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日沼禎子

 

講評

MARUCHANの018番。
神秘的な写真とともに、「月が真ん中にいる。とても遠くにいる。」という言葉にも強く心が惹かれました。この空は、夜明け前なのだろうか。とても高く、遠い。けれどもその瞬間、確かに自分と繋がっている、私だけの月。その魅惑の瞬間、シャッターが切られたのだろうか。表現が必然として存在したことを証明する、写真ならではの力が宿っていると思わせてくれる作品。

日沼禎子

女子美術大学教授。ギャラリー運営企画会社、美術雑誌編集者等を経て、1999年から国際芸術センター青森設立準備室、2011年まで同学芸員を務め、AIRを中心としたアーティスト支援、プロジェクト、展覧会を多数企画、運営する。
陸前高田AIRプログラムディレクター(2013年~現在)、さいたまトリエンナーレ2016プロジェクトディレクター、緑と花と彫刻の博物館(宇部市ときわミュージアム)アートディレクター(2017年~)、他を歴任。

​◆女子美術大学◆​

https://www.joshibi.ac.jp/

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​松嶋恵

講評

写真は静止画ですが、その中にも息遣いや動き、空気の振動、季節、音などが伝わってくる奥行きがある画が素敵だと思います。

KURAKIさんのお神輿を担ぐ人々は、後ろ姿ですが、皆さんが必死に伝統を守って、歯を食いしばって汗をかいている顔の表情や、声が聞こえてくるようです。

KOJIさんの鳩とそれを撮影する本人の陰は、人と鳩が会話をしているように見えます。落葉した木から差す光が季節も感じさせ「寒くなってきたね」と話しかけているよう。

MARUCHANさんの斜めのアングルは、飛びながら撮影したのか?!と思わせる、撮影者の動きを感じます。おそらく望遠モードを使ったと思いますが、少し丸みを帯びた輪郭が、宇宙を見ているような気になりました。

松島恵(まつしまめぐみ)

映画制作/通訳案内士

子どもの頃から映画館に通いつめ、卒業後は映画配給会社に就職。留学を機に転職し、地元の自治体で在住外国人支援と国際交流のイベント企画に10年以上関わり、その後また映画業界に舞い戻る。国際映画祭の運営と映画制作を経て、大阪関西万博で映画監督の河瀨直美さんがプロデュースするパビリオンのプロデュースチームメンバーに参加。万博後は自然と関われる暮らしを目指し模索中。

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宮本直考

講評

ご本人がどこまで認識されていらっしゃるのかわかりませんが、
KOJIさんとHIDEAKIさんの写真はどれも、写真の大切な要素のひとつであるフレームという枠が、
しっかりと見えている感じがしました。

その上で、013の写真はさらに時間が、おそらく数秒後には無くなっている一瞬が写っていて、
僕にとってもっとも印象的に1枚になりました。

宮本 直孝

フォトグラファー。1961年 静岡県生まれ、1984年 早稲田大学中退、渡伊。1990~1991年 オリヴィエーロ・トスカーニに師事、1993年 帰国、独立。2003年 渡伊、PHOTOGROUP SERVICE所属。2005年 帰国。
https://www.naomiyamoto.com/jp/index.html

EXHIBITION
2007年 「forty six portraits of beautiful women」 表参道・スパイラル
2010年 「COVER GIRLS」表参道・スパイラル
2010年 「THE CATS」表参道・スパイラル
2010年 「Fill the Cup with Hope」WFP チャリティ写真展 表参道・GYRE
2012年 「ロンドンパラリンピック選手写真展」東京メトロ 表参道駅 AD ウォール
2016年 「Portraits of Refugees in Japan‐難民はここにいます。」表参道駅 AD ウォール
2017年 「母の日-I’m a mother of a child with Down syndrome.」表参道駅 AD ウォール
2019年 「11 月22 日はいい夫婦の日」表参道駅 AD ウォール
2020年 「医療従事者ポートレート」表参道駅 AD ウォール
2022年 「STAND WITH UKRAINE」表参道駅 AD ウォール

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村山長

講評
「ドヤの部屋」や「山谷の夜景」、「仲間との時間」、「訪問看護師との交流」など、日々の暮らしや人と人とのつながり、そして街の変化を静かに見つめた写真が並び、どの作品にも“カメラを持つ人が作家として歩み始めている”ことを感じました。
特に印象的なのは、ありふれた日常が、撮影者のまなざしによって特別さを帯びている点です。例えば古いエアコンやちゃぶ台、テレビのある部屋、懐かしさや温かさを感じさせる構図。夜景や花火のような瞬間風景には、うっとりするような光の残像が映えて、むしろ宇宙のような広がりを感じさせます(TOKIOさんの夜景など)。また、仲間や訪問看護師との関係性が自然体で写されており、“信頼”や“共同性”が写真の中に息づいています。
今回の作品群からは、単なる記録を超えて、撮影者自身の暮らしや歴史をそっと語りかける力を強く感じました。見慣れた風景が特別な瞬間へと変わる、その過程に立ち会わせていただいたような、静かな感動がありました。

Hisashi Murayama(村山 長)


ライカカメラジャパン株式会社
マーケティング部 ギャラリスト /写真家
国際写真センター(ICP/ニューヨーク)で学び、アルル写真祭をはじめ欧米・アジアの写真祭やギャラリーで作品を発表。都市の記憶や人々の営みをテーマとしたドキュメンタリーを中心に、Le Monde、Libération、M、The Wall Street Journal、Esquire など国際媒体にも多数の写真を提供。グループプロジェクト「Tangophoto」「The Singled Person」に共同的な創作活動にも参加し、出版物にも寄稿。2024年よりライカギャラリーのギャラリストとして、展示企画および写真文化の紹介に携わっている。

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​弓指寛治

講評

今年はHIDEAKIさんに僕は票を入れたいと思います!

3点の組写真が素晴らしいです!
旅行の思い出を作品にしているのだと思うのですが、
一枚目のお花畑、無知な僕にはこの水色の花がという花なのかわかりません。
スミレ・・・と思ったけど調べたら違うっぽい。
咲き乱れる花の中にポツンとオレンジ色のナガミヒナゲシがいる、あれは外来種のやつだ。
二枚目はおいしそーな串焼きと瓶ビール。これだけでHIDEAKIさんにとってこの日が
良い日だったんだろうな、というのが伝わってくるから不思議です。
そして三枚目、テキストには「懐かしい」と書いてあるけどかつて暮らしたことのある
場所なのかな?そこを通り過ぎてどこかに向かっているのか、山谷に帰っているところなのか。

この三枚は同じ日に撮られたのか別々なのかわからないけれど、シンプルな構図の中に
HIDEAKIさんの過去や現在、人生の叙情がみっちり詰まっている気がしてすごく心惹かれました!

弓指寛治

アーティスト。1986年三重県伊勢市生まれ。
名古屋学芸大学⼤学院修了後、学生時代の友人と名古屋で映像制作会社を起業。2013年に代表取締役を辞任し上京、作家活動を開始。同年の秋に母が自死してしまい、これまでの人生観や生活が一変してしまう程の大きな失望を経験する。 この出来事をきっかけに死者への鎮魂や、亡き者への視点を変容させる絵画作品の制作を手掛け始める。

◆YUMISASHI KENJI WORKS◆ 

https://yumisashi-kanji.com/

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