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地道に、辛抱強く

新型コロナウィルス感染症がいまだに猛威を振るっています。 まずは、より厳しさを増している医療現場に身を置き、患者の命を守るために日々さまざまな形で奮闘してくださっている方々、人々の暮らしに必要不可欠な社会インフラを維持してくださっている方々に、心から感謝申し上げます。 そして、同じ生活困窮者支援の現場で新型コロナウィルス感染拡大の影響で苦境に追い込まれた方たちの支援に尽力されている他の支援団体の皆さま、行政機関などの皆さま。 自身が感染するリスクにさらされながらのご支援は、普段以上に心労が重なることかと思います。 どうかお互いに体と心を大切にしながら、互いに手を取り合いながら、ともにこの苦境を乗り越えていければと願っています。 さて、山友会では4月7日に政府から緊急事態宣言が発令されてから、縮小して活動を続けています。 ※【重要なお知らせ】5月6日以降の各活動と事務局の体制について(4月30日付)

「路上生活を送らざるを得ない人々や、苦しい生活を送らざるを得ない人々が、ひとりではないと感じて笑顔を取り戻すこと」をミッションに、路上生活という最も社会的に孤立した人々につながりとコミュニティをつくることを目指す山友会にとっては、どの活動も本当に大切なものなので、かなり難しい判断ではありましたが、感染防止を第一に考え、山友会クリニック、生活相談、炊き出し・アウトリーチ、ケア付き宿泊施設「山友荘」以外の活動は中止、医師以外のボランティア参加は中止とすることにしました。



とくに山友会クリニックと生活相談、炊き出し・アウトリーチの取り組みは、路上生活をされている方たちにとっては命綱。

何としても続けていかなければならないと思っています。 今回のコラムでは、活動縮小後のそれぞれの活動の様子をお伝えしたいと思います。 ********** ■山友会クリニック



※看護師がスタッフ・ボランティア向けに作成した新型コロナウィルス感染防止対策の資料

ボランティア医師の協力によって、ほぼ普段どおり診療を続けられています。 それぞれのお勤め先の医療機関でも大変な状況にもかかわらず、ほとんどのボランティア医師が診療を続けてくださっています。本当にありがたいことです。

新型コロナウィルスの感染が拡大し、路上生活の方や山谷のドヤにお住まいの方たちがそれぞれの健康面に不安を感じやすくなっている状況において、ますますこの取り組みの重要性が高まっていると感じます。

もちろん、診療室の換気や環境消毒、風邪症状のある患者さんにはその他の患者さんと区画を分けて対応するなどの感染防止対策にも取り組んでいます。 幸いにも今のところは感染を疑われるような方やひどく体調を崩された方がいないことが、何よりもの幸いです。

そして、山友会クリニックの看護師スタッフの皆さんは、新型コロナウィルスの基礎知識をはじめ感染防止のために必要な知識をスタッフにレクチャーしたり、使い捨てマスクや消毒用アルコールなどの衛生物品の管理をしたりと、安全に活動を続けていくために感染防止対策の管理を担ってくれています。いわば、山友会の感染防止対策の司令塔のような役割です。

■相談室



生活相談も通常どおり実施しています。

それでも、活動を続けているものの中で、一番変化があったのは相談室です。 シャッターを閉めて、相談などがある方は入口のドアから声をかけてもらうようにしています。シャッターが閉まっているので、普段の様子と比べると閑散としています。 誰でも気軽に立ち寄れ、自然と人が集うのが相談室の魅力ですが、今は我慢…。 それでも、いつも山友会に来てくれているおじさん達が何人か集まって、「やることなくて暇だよ」とお互いに愚痴をこぼす様子も。

そんなおじさん達もマスクを着けていたり、お互いに何となく距離を取っていたりと、それぞれに感染予防に気を付けて過ごしています。

相談室長の薗部さんも「何か疲れると思ったら、いつも集まってきてくれるおじさん達と話せないからなんだよな…」とぼやく始末(苦笑) また、地域生活サポート(アパートや簡易宿泊所等にお住まいの方の生活支援)についても、安否確認のための訪問は中止し、原則、緊急時の対応のみとしていますが、特に気になる方についての安否確認は続けています。 安否確認の取り組みの中で、ドヤで暮らすご高齢の方が意識障害のような状態になっていたところを発見し、救急搬送したことがありました。 この方に限らず、活動を縮小する前は、ドヤやアパートで暮らす地域生活サポートの対象者の方たちは、毎日のように山友会に来てくれていたので、体調などに変化があれば気が付くことができていましたが、外出しなくなったり、普段通っているところがなくなったりしたことで、異変に気が付く人がおらず孤立死のリスクが高まってしまっていると感じています。 一方で、電話での相談が少しずつ増えてきています。 つい最近まで派遣や住み込みで働いていた方が、新型コロナウィルス感染拡大の影響で失業し、住まいも失ってしまった。次の給料の振り込みまで所持金がない。生活保護を申請した後の宿泊先を探しているなどの相談が寄せられています。 所持金もなく宿泊先もない方には、支援制度の情報提供を行い、支援制度を利用されるまでの間の宿泊費や食事代を援助するなどの支援を行っています。 このほかにも、先の見えない不安、人生への絶望など、うまく言葉にできないのであろう不安や悩みの訴えがあります。 社会不安を背景に、こうした不安や苦しみ、寂しさなどの辛さを抱えきれなくなる一方で、辛さを打ち明けられる相手が身近にいない方たちが増えている可能性を感じます。 ■炊き出し・アウトリーチ

毎週水曜日の隅田川テラス周辺のアウトリーチ、毎週木曜日の炊き出しは継続しています。 今まで炊き出しを行っていた支援団体の中でも活動を中止しているところがあるため、路上生活されている方たちは毎日の食事を確保するのが難しい状況にあります。 1日1食でも食べられるようにと思いますが、ボランティアさんもおらず人手も限られている中では、山友会がそのすべてを担うことはできません。 活動縮小前は、食堂で毎日80人分近くの昼食を提供していたことを考えると、多くのボランティアの方たちご協力の有難みを一層感じています。 山友会クリニックの活動と同様に、今の状況においては、週に1回の炊き出しであっても食事にもありつけなくなってしまっている方たちにとっては、とても大切なものになってきています。



炊き出しの活動場面では、他にどこで炊き出しがあるのか尋ねる方もいらっしゃいました。 路上で暮らす方などにとっては、本当に切実な問題です。 とはいえ、炊き出し1回につき100人分以上のお弁当やおにぎりを用意するのは、なかなかの労力で、今まで手伝ってくれていたおじさん達が手伝ってくれています。 ボランティアさんの参加は中止しているけど、おじさんはいいのかと、とても悩みました。 手伝ってくれているおじさん達に感染させえしまうのではないか…。 とはいえ、何もいわずにスタッフだけですべて済ませてしまうのは、筋が通らないのでは…。 いろいろな考えが逡巡する中で、おじさん達に相談すると「誰かがやらなきゃなんないんだからやるよ」「やることないし、やらせてよ」と話してくれました。 そして、少しでも不安を感じたら絶対に無理はしないでほしいと伝えて、一緒に活動をしています。 勝手な解釈かもしれませんが、「自分たちにとって必要な(必要だった)取り組みは、自分たちで守る」という決意があるようにも感じました。



もちろん、感染防止対策も念入りにしています。 小分けした弁当を配布するのは変わらないにしても、スタッフ・手伝ってくれるおじさん達にマスクを着用してもらったり、都度、消毒用アルコールで手指消毒してもらったりしながらの活動です。 少し物々しい雰囲気になってしまうのが、炊き出しに並んでくれる方やアウトリーチで出会う方には申し訳ないのですが…。 普段から炊き出しに並ばれている方たちにとっての必要性は増している一方で、新型コロナウィルス感染拡大の影響による不況で、炊き出しに並ぶ方の人数が増えることが予想されていましたが、今のところは多くても普段より20人ほど増える程度で、あまり変化は見られません。 もしかすると、不況の影響が出てくるのはこれからなのかもしれません。 ■山友荘




世の中が感染防止のためにありとあらゆるものを自粛しようとも、山友荘は入居されている方たちにとっての住まいなので、普段どおり運営し続けていかなければなりません。

入居者の皆さんも手指消毒や外出時のマスク着用に協力してくれ、スタッフも施設内の環境衛生や入居者の健康状態の観察に日々取り組んでくれています。

ご高齢の方やご病気をお持ちで重症化リスクの高い方たちが暮らしているので、施設内が安全地帯でいられるよう日々気が張ってしまう毎日。

それでも、和やかな日常を守ってくれている入居者の皆さん、スタッフ、そして社会サービス(往診医、訪問看護師、在宅介護事業所の皆さま)には本当に感謝です。

■事務局

活動の最前線で支援にあたるわけではないので目立ちづらい部署ですが、日々の経理、労務管理、寄付者の方々への対応など、安定して活動を行うことを下支えする大切なところです。

感染防止やリスク回避のため、出勤する事務局スタッフの人数を減らしたり、リモートワーク可能なものはリモートワークで対応してもらったりしています。 一方で、マスクや消毒用アルコールなどの衛生物品の寄付の問い合わせなど業務量は増えているのですが、平時より少ない人手で何とかこなしてくれています。 (なので、寄付などの問い合わせは、できればメールやFAXでお願いできれば助かります…) このほかにも、スタッフ同士の会議や理事会をオンラインで行うようにしました。 初めての試みでしたが、新鮮な雰囲気で臨むことができて、なかなか好評のようです。 また、危機管理として、スタッフやボランティアの中で感染者が発生した場合などのシナリオを想定して、保健所との連絡体制や活動を継続する方策を検討するなどの備えを進めています。 ■地域の支援団体との連携

山谷地域やその周辺での炊き出しが少なくなったことに伴って、山谷労働者福祉会館が週6日城北労働福祉センター前で弁当を配布してくださったり、ひとさじの会が月2回だった夜回りを毎週に増やしたりと、それぞれに感染防止対策で人手の確保が難しい中で、支援活動を増やしてくださったり、続けてくださったりしています。 (ここに書ききれていない支援団体による支援活動もあります) 平時からのことではありますが、本当にありがたく、頼もしく感じます。 山友会も同じ山谷地域で支援を行ってくださっている団体に米などの食品を提供させていただくなどで協力しています。 また、他の支援団体も夜回りなどで声をかけた方を山友会の無料診療や生活相談につないでくださるなど、主義主張を超えて、さまざまな面で助け合いながら山谷のおじさん達を守ろうという気運を感じています。 ********** まだまだ厳しい状況は続きそうです。 新型コロナウィルス感染拡大による不況(「コロナショック」とも呼ばれるそうです)の影響で、生活に困窮する方の存在など多方面で影響が出てくるのは、前述のとおり、むしろこれからなのでしょう。 本当に悔しいことですが、私たちにできることは、現実的に考えれば限られています。 だからこそ、私たちにできることを地道に、辛抱強く取り組んでいくことが大切だと思っています。

(副代表 油井)

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